505(b)(2)申請とANDA訴訟の違い

米国食品医薬品局(FDA)における新薬承認制度には複数のルートがあります。その中でも
ジェネリック医薬品の簡略申請(ANDA: Abbreviated New Drug Application)と、
既存データを部分的に活用できる申請(505(b)(2)申請)は、しばしば混同されがちです。
しかし、両者には重要な相違点があり、製薬企業の戦略や特許訴訟に大きな影響を及ぼします。


1. ANDA申請とは

  • 対象: ブランド薬と同一の有効成分・剤形・強度を有する完全なジェネリック薬
  • 要件: 生物学的同等性(bioequivalence)の立証で足りるため、臨床試験は不要
  • 特許の関与: オレンジブックに記載された特許すべてについて必ず「パラグラフ認証(I〜IV)」を行う。
  • 訴訟の性質: Hatch-Waxman法に基づく「人工的侵害」(35 U.S.C. § 271(e)(2))として、ANDA提出自体が特許訴訟の引き金になる。

2. 505(b)(2)申請とは

  • 対象: 完全な新薬でも完全なジェネリックでもない「中間的な製品」
    例:新しい剤形(徐放錠)、新しい投与経路(点鼻剤)、新しい用量設定、新しい適応症
  • 特徴: 既存のFDAデータや文献を活用しつつ、不足分のみ独自データを提出できるため、開発コストを大幅に削減可能
  • 特許の関与: 21 U.S.C. § 355(b)(2)(A) に基づき、申請薬を「カバーする」オレンジブック特許については認証(I〜IV)が必要。ただし すべての特許に一律認証が必要なわけではなく、製品に関連しない特許については認証不要
  • 訴訟の性質: ブランド企業から訴訟を受けることもあるが、必ずしも「ジェネリック挑戦」とは限らない。むしろ新たなビジネス機会(ライセンス交渉、共同開発)に発展する場合もある。

3. 実務上の相違点(まとめ)

項目 ANDA 505(b)(2)
対象 完全ジェネリック 変更型・改良型製品
臨床試験 原則不要(BE試験のみ) 不足分のみ実施
特許対応 オレンジブック特許すべてに認証必須(21 U.S.C. § 355(j)(2)(A)(vii)) 関連特許のみ認証必要(21 U.S.C. § 355(b)(2)(A))
訴訟リスク 高い(ブランド vs. ジェネリック構図) 状況依存(協力関係になる場合も)
排他権 パラグラフIV初回申請で180日独占 排他権なし(ただし独自戦略可)

4. まとめ

ANDAはジェネリック市場参入のための直接的な手段であり、特許訴訟と不可分の関係にあります。
一方、505(b)(2)は改良型製品やライフサイクルマネジメントに活用されるルートで、特許リスクはあるものの、協業やライセンスにつながる可能性も大きいです。

製薬企業にとって、どちらを選択するかは市場戦略・特許状況・開発コストのバランス次第です。


参考条文

  • 21 U.S.C. § 355(j)(2)(A)(vii) – ANDA申請における特許認証(Paragraph I〜IV)
  • 21 U.S.C. § 355(b)(2)(A) – 505(b)(2)申請における特許認証(関連特許に限定)
  • 35 U.S.C. § 271(e)(2) – ANDA/505(b)(2)申請提出を「人工的侵害」とみなす規定
  • 21 C.F.R. § 314.53 – オレンジブック特許リスティングの規定